研究室配属について(20150301)


研究室配属に際して,どのようなことを考えるべきか,多くは過去の文章で対応できると思いますが,最近の考えを徒然と書いていきます.あくまで,個人的なものであって,普遍的な話をしているつもりはありませんし,研究室の公式見解でもありません.

まず,鈴浦がいつまでも北大に居続けるとは考えないでください.北大応物は職場環境としては素晴らしいのですが,個人的な理由により東京方面への異動を希望しています.そう言いつつ,数年経ちますし,このまま定年までどこにも移れない可能性もあるのですが,決まるときは急ですので,大学院まで継続して指導を受けるつもりだったのが,進学したら居なくなってた,ということがありえます.私自身,博士課程に進学する時の指導教員がそうでしたし,応物の他の教員だって,その可能性はありえます.しかし,そういうことになる確率を出来る限り小さくしたいということであれば,配属はご遠慮していただいた方がよろしいかと思います.

鈴浦グループとは?(概要)で説明した通り,学生には研究することを求めます.砕けた言い方をすれば,一緒に研究を楽しみたいと思っています.しかし,楽しいと思っているのはこちらだけで,学生の方は苦しんでいるということも少なくありません.

それは当然で,どこに楽しみを見い出すかという神経回路が十分に発達していないことによります.意図した研究成果が得られれば,嬉しいのは誰でも同じです.しかし,そんなことで喜べる瞬間は,一年を通じて,多くはないです.そんな感動的な結果も,数日も経つと,アタリマエのことに思えてきます.

どんな分野でも一定の経験を積めば,問題に遭遇した際に,ある程度,結果が予想できるようになります.卒論や修論のテーマを見つけるのもこのような状況で,これは研究者にとって大きな楽しみです.しかし,卒論生が独力でその楽しみを得るのは困難です.大学院生でこの楽しみを経験できるようになると,研究者としての素質があると言えます.

ところが,結果が予想できるケースも,そう多くはありません.では,どこに楽しみを覚えたらいいのでしょうか?それは,敢えて極端な言い方をすると,失敗した時です.理論研究は,問題解決作業の連続ですから,問題に応じて適当な理論を選んで,計算を実行し,その結果を眺めて,妥当性を議論するわけですが,何をもってそれが正しいとするの判断は容易ではありません.

それに比べて,ダメな場合の方が,原因が明確で気が付き易く,ダメ出しされると学生は落ち込むんですが,こっちは,むしろ,ダメな点がはっきりすると,それを解決すればいいという指針ができるので,ありがたいんです.つまり,問題に突き当たったことが嬉しく,先が開けたと感じるので,楽しいんです.

指示した作業が順調に進んで結果が出た,なんていうのは,当然のことであって,自分にも出来そうもないことを平気で頼むような人なら違うのかもしれませんが,お互いの了解があることを前提とすれば,自分の役割をきちんとこなすことはオトナとしては当然です.そんなことで褒められたら,むしろ,コドモ扱いされたと怒るべきだと思います.

いずれにしろ,大小問わず,問題解決に繋がることに楽しみを感じられる人,あるいは,楽しみと思えなくてもそれを自分の何らかの意味で成長に繋がると捉えられる人が,我々のグループでの研究スタイルに向いていると思います.決まりきった作業を忠実に実行する,言われた作業をきちんとこなしたことを褒められる,というようなことに楽しみを感じたい人は,遠慮してもらった方がいいでしょう.

昔ながらのギャンブルに加え,SNSやスマホゲームなど短期的な報酬により快感が得られるサイクルにかなりの資金や時間という貴重なリソースを投入している学生が増えている印象を受けます.そこでは,快感の代償として搾取されていることに気が付かない.研究面で有能な学生でも,その搾取サイクルにおいてわかりやすい評価軸で高得点を得られることで,さらに搾取されるという悪循環に陥っている可能性もあります.

もちろん,それを超える快感が研究によって得られればいいでしょう.ギャンブルやゲームに敵うはずはないということもないんだけれども,いかんせん,研究の楽しみを理解するのには時間がかかる.しかし,必要なのは忍耐よりも楽観性.つまり,critical thinking で思いつく限りの誤りをあぶり出し,positive thinking で新たな道に進めるということ.そういう思考法は訓練しだいですぐに身に付けられますんで,短期的な報酬系の抑制が効かない,などということがなければ,興味を持てるテーマに携わり計算を進めていけば,研究の楽しみが味わえるようになると期待します.


研究室配属で気をつけること,研究室でどのように過ごすべきか,研究者になるには,なんていう情報はネット上にあふれています.全面的に賛同する内容ばかりではないですが,いくつかセレクトしてみました.小川さんは私が学生時代所属した研究室の先輩,次は昔から引用させてもらっている数学科での話,残りの3つは過去にツイッターのタイムラインに流れてきた情報から拾ったもの.分野は色々ですが,参考になれば幸いです.



過去の文章も参照してください.