鈴浦のこれまでの研究遍歴


ここでは鈴浦のこれまでの研究遍歴,というか,世話になった研究室を紹介することで,過去の研究についての説明とします. 要するに手抜きですが, 皆その道で先頭を走り続けている方々ですから,私などが語るより彼らの話の方を直接聞いたほうがためになるでしょう. これらのサイトから辿れるさまざまな文書が参考になるはずです.

それぞれの分野で私の貢献は小さなものですが,それでも,幾ばくかの知恵を継承していると思っていますので, 全く新しく始めるよりは簡単にその分野の研究に参入できるはずです. 研究が順調に進んで,その方向へより専門を深めたいということであればそちらへ紹介しますし, すでに切り開かれた道はあえて避け新たな方向性を探るための指針とすることも出来るでしょう.


鈴浦が北大に異動して始めた共同研究が量子ホール系の熱流体力学の定式化とその応用でした. 強磁場中の量子系による非平衡・非線形応答という,到底,扱えそうに無い状況設定を, 強磁場極限の電子系に局所平衡の仮定を課すことで何とか計算可能なマクロ変数の流体力学的な方程式に帰着することが出来ました. 今後は,この方程式からパターン形成など多様な非線形現象を導き出すということが今後の展開になるでしょうか. このテーマで鈴浦と研究することは可能ですが,これに狙いを定めるなら,まずは,明楽グループにお問い合わせ下さい.


助手を物性研で4年,東工大で1年務めました. カーボンナノチューブの格子振動と電子・格子散乱の研究と,ナノチューブ・グラフェンシートの量子輸送現象について研究しました.

研究の主体は本来の半導体の輸送現象に移りつつありますが, ナノチューブ・グラファイト系の電気伝導・光学応答についても他の追随を許さない程,基礎的研究成果の蓄積があります. 固体物理学の王道をまっすぐ突き進みそれを精密科学の領域まで押し上げることに貢献している研究室である,というのが私の印象です.


東大工学部にて助手を2年務めました. 学生時代から研究室に出入りさせてもらって,ここで多体問題・光物性・量子光学について学び, 今の私の基礎があるのだと思います. 助手時代は励起子系の非線形光学応答と1次元銅酸化物の光学応答について,研究を継続していました.

光物性理論の分野で常に研究の新しいトレンドを生み出されています. 研究について語るとき本当に面白そうに話してくださるのが印象的で,私も学生に対してはそのようにありたいと思いますがなかなかうまくいきません. 東大退官後は強相関物質による量子エレクトロニクスという新たな分野を,理論・実験の両面から開拓されています.


大学院の博士課程の時に,研究指導していただきました. 強相関系電子系の実験データが集まる場所だったこともあり,高温超伝導物質の母物質である 銅酸化物の1次元系の光学応答について最新の結果に触れることが出来たのは幸運でした. ここで,実験データを再現するために電子相関に対する古典的な手法から最新の理論までを数多く試すことが出来た経験が, どんなデータであっても,まずは簡単な数値計算や手計算を試してみることへのバリアを下げることに繋がっていると思います.

強相関電子系の理論についてはここにいけば何でもわかります. しかも,ここから出てくる話はわかりやすく面白いというのが同じ分野の他研究室と比較して際立っています.


大学院での最初の指導教官です. 当時,教官1人学生1人という状態で毎日何らかの議論を重ね,ここで,理論研究のやり方を学びました. 分数量子統計の概念が出始めた頃で,励起子の統計性という観点から,スピン系の可解模型を用いて相関関数を厳密に計算し, 多励起子系の発光スペクトルを研究していました. また,励起子系と電磁場の相互作用のダイナミクスを完全に量子論的に扱う手法の近似理論を構成し,量子井戸に閉じ込められた励起子の光学応答の研究も行いました.

私が博士課程に進学すると同時に今の数理科学に異動されました. 研究は完全に可積分系にシフトし,現在は離散可積分系の研究が中心課題です. いわゆる,超離散化を提案された1人で,当時はセルオートマトンとソリトン方程式の対応が取れたというぐらいの感覚でしたが, ここまで研究が発展するとは思っていませんでした.


卒業研究で配属された光物性実験の研究室です. ボーズ凝縮という言葉に惹かれ,励起子・励起子分子の高密度励起状態に関する実験的研究で卒業論文を書きました. 研究の初歩から光物性・非線形光学・量子光学の基礎に触れ,実験研究者との議論することの重要性を確信しました. CuClの励起子分子の輻射寿命を計算したのが実は私の最初の理論研究ということになります.

光物性・量子エレクトロニクスの実験のみならず,理論についても最新の情報が知りたい時はここを尋ねます. 原子分光の手法を用いた固体の精密分光や励起子のコヒーレント制御には目を見張るものがあります. ボーズ凝縮は原子ガスに先を越されましたが,多励起子系の冷却も着実に進歩しているようです.