統計力学IIおよび統計力学演習II(2011年度)受講者のためのページ
更新情報
- 0214:成績確定
- 0126:演習期末試験の案内.
- 0125:中間試験1,2,期末試験の結果による講義合格者リスト公開.
- 0121:演習通常点による合格者リスト公開.
- 0119:期末試験の案内.
- 0118:第12回問題の解答例公開.
- 0116:第12回問題公開.
- 0111:第11回問題の解答例公開.
- 0110:中間試験2の採点結果公開.
- 0109:第11回問題公開.
- 1214:中間試験2の案内.
- 1212:第10回問題公開.問題文修正(PM23:00,問題3coshK -> 2coshK)
- 1205:第9回問題公開.
- 1128:第8回問題公開.
- 1121:第7回問題公開.
- 1117:中間試験1の採点結果公開.
- 1114:第6回問題公開.
- 1102:中間試験1の案内.
- 1031:第5回問題公開.
- 1025:第4回問題公開.
- 1018:第3回問題公開.
- 1011:第2回問題公開.連絡事項あり(演習とは無関係).問題文修正(AM11:10,問題1の条件追加).
- 1004:ページ公開.
成績確定(20120214)
[合格者リスト]
演習期末試験の案内
1月31日(火)14:45−16:15 (4講目)演習に対する期末試験
上記の日程で演習に対する期末試験を実施する.講義は既に終了している.
演習・講義ともに現段階での合格者リストを公開しているので,どちらか一方でも合格していない場合は,必ず受験すること.
演習に対しては通常点の平均点とこの期末試験の平均点による評価も行い,通常点のみで合格した場合でも点数が上がる可能性がある(高い点を採用するので下がることはない)ので,受験しても構わない.
講義の試験で合格しなかった場合,この試験で50点以上得点すれば講義を合格とする.ただし,最低1問に完答していることを条件とする.
出題範囲は全12回の演習問題と3回の試験問題で扱った問題.12回の講義の各回から1問の出題となっている.過去に出題した内容と問われる内容は基本的に同じであるが,問題文は大幅に簡略化されているので,その導出を完全に理解していることが求められる.特に,以下の内容を学習しておくこと.
- スターリングの公式の導出
- シャノンエントロピーと熱力学的エントロピーの等価性
- 常磁性体のキュリー則の導出
- 古典理想気体に対する粒子数分散
- ボーズ分布関数の導出
- ベルヌーイの公式の導出
- ゼロ温度フェルミ粒子系におけるエネルギーと粒子数
- 格子比熱の高温極限
- 1次元イジング模型の分配関数
- ランダウ理論による強磁性2次相転移における磁化の温度依存性
- 1次元拡散方程式による粒子拡散の時間依存性
- ランジュバン方程式によるアインシュタイン関係式の導出
これまでの試験と異なり,資料の持ち込みは許可しない.
これ以後の再試験は行わない.12回の演習と4回の試験で充分だろう.最後のがんばりを期待する.
講義の評価(20120125)
[合格者リスト]
演習の評価(20120121)
[合格者リスト]
期末試験の案内
1月24日(火)13:00−14:30 (3講目)講義に対する期末試験
1月31日(火)14:45−16:15 (4講目)演習に対する期末試験
上記の日程で期末試験を実施する.24日4講目は期末試験問題の解説を行う.通常の演習は行わない.31日3講目の講義も行わない.
講義の単位は3回の試験の点数の平均点により評価する.演習の単位は,まず,通常の演習12回の平均点により評価する.
講義・演習の合格者リストを,1月27日(金)までには,このサイトで公表するので,必ず確認すること.
どちらも合格の場合は,31日の試験を受験する必要はない.
演習に対しては通常点の平均点と期末試験の平均点による評価も行い,合格した場合でも点数が上がる可能性がある(高い点を採用するので下がることはない)ので,受験しても構わない.
講義が合格とならなかった場合は,演習の期末試験で一定の点数を取れば合格とする可能性がある.該当者は演習が通常点で合格であっても31日の期末試験を受験すること.その場合,50点以下の場合は自動的に不可とし,3回の試験結果等の出来具合をあわせて考慮した結果,講義を合格とする場合も成績は可とする.
24日実施する試験の出題範囲は第11回と第12回の講義・演習で扱った範囲.特に,以下の内容を学習しておくこと.
- 2次元のランダムウォークと拡散方程式
- 拡散方程式による時間発展
- ランジュバン方程式による速度の平均値
- ランジュバン方程式による速度の相関関数(異なる時刻における速度の積の平均値)
- 易動度と速度の相関関数の関係
- フォッカー・プランク方程式による分布関数の保存則
- フォッカー・プランク方程式による速度の期待値の時間発展
- フォッカー・プランク方程式による運動エネルギーの期待値の時間発展
- 拡散定数と易動度のに対するアインシュタイン関係式
24日はA4用紙一枚分の自筆メモの持ち込みを許可する.両面使用してよい.コピー・印刷資料など,指示に従わないものを発見した場合は即座に不正行為と見なす.また,解答用紙とあわせてメモも回収する.場合によっては,その内容を見て,加点する可能性がある.メモの内容で減点することは無いので必ず提出する事.
31日の試験では資料の持ち込みは一切禁止する.出題範囲は全12回の演習問題と講義に対する試験問題からピックアップし「問題を簡略化して」複数出題する.なるべく多くの問題を出し,選択式とするので,苦手な所はスキップしても構わないが,このうちのいくつかが出来なければ,統計力学の単位を出せないのもやむを得ないという想定で出題するので,重要なポイントを確実に導出できるようにしておくこと.
これ以後の再試験は行わない.健闘を祈る.
中間試験2の案内
12月20日(火)13:00−14:30 (3講目)講義に対する中間試験2
統計力学II(講義)に対する中間試験を上記の講義時間中に行う.
続く演習の時間は,この試験に対する解答の解説を行う.
通常の演習は行わなず,出席も取らないので,興味の有る者だけが出席すれば良い.
出題範囲は第6回から第10回までの講義・演習で扱った範囲.特に,以下の内容を学習しておくこと.
- ランダウ理論による強磁性相転移
- 磁化の温度依存性と臨界指数
- 臨界点直上での磁化の磁場依存性と臨界指数
- 臨界温度より高温での帯磁率
- 臨界温度より低温での帯磁率
- 量子理想気体の古典極限が成立する化学ポテンシャルに対する条件
- 量子理想気体の古典極限が成立する密度と温度に対する条件
- 理想気体の状態方程式に対する古典極限における量子補正
- 理想フェルミ気体の低温極限における比熱の定性的導出
- 理想フェルミ気体の圧力の温度依存性
- 理想フェルミ気体の比熱の温度依存性
- 理想ボーズ気体のボーズ凝縮相転移
- 理想ボーズ気体の凝縮成分の温度依存性
- 理想ボーズ気体の圧力の温度依存性
A4用紙一枚分の自筆メモの持ち込みを許可する.両面使用してよい.コピー・印刷資料など,指示に従わないものを発見した場合は即座に不正行為と見なす.また,解答用紙とあわせてメモも回収する.場合によっては,その内容を見て,加点する可能性がある.メモの内容で減点することは無いので必ず提出する事.
中間試験1の案内
11月08日(火)13:00−14:30 (3講目)講義に対する中間試験1
統計力学II(講義)に対する中間試験を上記の講義時間中に行う.
続く演習は休講とする.
出題範囲は第5回までの講義・演習で扱った範囲.特に,以下の内容を学習しておくこと.
- 1粒子状態密度
- 1粒子分配関数
- 古典理想気体に対する大分配関数
- グランドポテンシャルを出発点とした熱力学量の計算
- 古典理想気体の状態方程式とエネルギー等分配則
- 混合気体
- 粒子数の期待値と分散
- ボルツマンの原理によるエントロピー
- 条件付き極値問題
- エントロピーを最大にする1粒子分布関数
- グランドカノニカル分布による1粒子分布関数
- フェルミ分布とボーズ分布の導出
A4用紙一枚分の自筆メモの持ち込みを許可する.両面使用してよい.コピー・印刷資料など,指示に従わないものを発見した場合は即座に不正行為と見なす.また,解答用紙とあわせてメモも回収する.場合によっては,その内容を見て,加点する可能性がある.メモの内容で減点することは無いので必ず提出する事.
このページについて
ここでは統計力学IIおよび統計力学演習IIで使用する配布資料を公開する.
ファイルはすべてPDF形式であり,ダウンロードにはユーザー名とパスワードによる認証が必要である.
配布資料
- 配布資料1:講義・演習の進め方とその評価(1004)
各回の講義内容と演習問題
演習は毎回テスト形式で行う.
答案の採点は数理物理工学研究室の大学院生(M1)である渡邉章友氏が行う.
- 第1回 (1004):ミクロカノニカル分布:[演習問題]
1-1 イントロダクション
1-2 ミクロカノニカル分布
得点範囲(下限) |
0 | 10 | 20 | 30 | 40 | 50 |
60 | 70 | 80 | 90 | 100 |
人数(全39人中) |
0 | 6 | 1 | 5 | 6 | 5 |
7 | 2 | 3 | 2 | 2 |
(配点=150:平均点=52:最高点=130)
採点者(渡邉)のコメント:[PDFファイル]
- 第2回 (1011):カノニカル分布:[演習問題]
2-1 カノニカル分布
2-2 分配関数
2-3 ヘルムホルツの自由エネルギー
2-4 エネルギーの揺らぎ
2-5 自由粒子
得点範囲(下限) |
0 | 10 | 20 | 30 | 40 | 50 |
60 | 70 | 80 | 90 | 100 |
人数(全41人中) |
2 | 2 | 4 | 10 | 6 | 7 |
2 | 0 | 1 | 1 | 6 |
(配点=150:平均点=50:最高点=135)
採点者(渡邉)のコメント:[PDFファイル]
- 第3回 (1018):カノニカル分布の応用:[演習問題]
3-1 理想気体
3-2 格子比熱
3-3 常磁性
得点範囲(下限) |
0 | 10 | 20 | 30 | 40 | 50 |
60 | 70 | 80 | 90 | 100 |
人数(全40人中) |
1 | 5 | 9 | 6 | 4 | 2 |
1 | 2 | 2 | 1 | 7 |
(配点=150:平均点=53:最高点=140)
採点者(渡邉)のコメント:[PDFファイル]
- 第4回 (1025):グランドカノニカル分布:[演習問題]
4-1 化学ポテンシャル
4-2 グランドカノニカル分布
4-3 理想気体
得点範囲(下限) |
0 | 10 | 20 | 30 | 40 | 50 |
60 | 70 | 80 | 90 | 100 |
人数(全41人中) |
0 | 2 | 4 | 6 | 8 | 7 |
5 | 1 | 2 | 1 | 5 |
(配点=150:平均点=56:最高点=130)
採点者(渡邉)のコメント:[PDFファイル]
- 第5回 (1101):フェルミ分布とボーズ分布:[演習問題]
5-1 粒子の無分別性と多粒子系の波動関数
5-2 粒子の量子統計性
5-3 最も確からしい状態
得点範囲(下限) |
0 | 10 | 20 | 30 | 40 | 50 |
60 | 70 | 80 | 90 | 100 |
人数(全38人中) |
0 | 0 | 3 | 2 | 0 | 3 |
3 | 6 | 6 | 4 | 11 |
(配点=150:平均点=80:最高点=145)
採点者(渡邉)のコメント:[PDFファイル]
- 中間試験1 (1108):[試験問題]
得点範囲(下限) |
0 | 10 | 20 | 30 | 40 | 50 |
60 | 70 | 80 | 90 | 100 | 110 | 120 |
人数(全50人中) |
0 | 4 | 4 | 9 | 2 | 9 |
4 | 6 | 2 | 3 | 4 | 0 | 3 |
(配点=120:平均点=78:最高点=120)
採点者(鈴浦)のコメント:[採点結果]
- 第6回 (1115):量子理想気体:[演習問題]
6-1 ベルヌーイの方程式
6-2 古典極限
6-3 量子理想気体の圧力
得点範囲(下限) |
0 | 10 | 20 | 30 | 40 | 50 |
60 | 70 | 80 | 90 | 100 |
人数(全37人中) |
0 | 2 | 1 | 2 | 5 | 3 |
6 | 2 | 4 | 2 | 10 |
(配点=150:平均点=76:最高点=150)
採点者(渡邉)のコメント:[PDFファイル]
- 第7回 (1122):フェルミ分布の応用:[演習問題]
7-1 フェルミ縮退
7-2 低温展開
7-3 電子比熱
得点範囲(下限) |
0 | 10 | 20 | 30 | 40 | 50 |
60 | 70 | 80 | 90 | 100 |
人数(全40人中) |
1 | 3 | 2 | 6 | 1 | 4 |
4 | 3 | 2 | 4 | 10 |
(配点=150:平均点=69:最高点=145)
採点者(渡邉)のコメント:[PDFファイル]
- 第8回 (1129):ボーズ分布の応用:[演習問題]
8-1 ボーズ凝縮
8-2 格子比熱
得点範囲(下限) |
0 | 10 | 20 | 30 | 40 | 50 |
60 | 70 | 80 | 90 | 100 |
人数(全40人中) |
0 | 6 | 5 | 6 | 1 | 4 |
4 | 2 | 3 | 4 | 5 |
(配点=150:平均点=55:最高点=130)
採点者(渡邉)のコメント:[PDFファイル]
- 第9回 (1206):磁性:[演習問題]
9-1 局在スピン系のハミルトニアン
9-2 平均場近似
9-3 強磁性相転移
得点範囲(下限) |
0 | 10 | 20 | 30 | 40 | 50 |
60 | 70 | 80 | 90 | 100 |
人数(全39人中) |
0 | 4 | 3 | 1 | 2 | 6 |
4 | 5 | 3 | 5 | 6 |
(配点=150:平均点=69:最高点=150)
採点者(渡邉)のコメント:[PDFファイル]
- 第10回 (1213):相転移と臨界現象:[演習問題]
10-1 ブラッグ・ウィリアムス近似
10-2 ランダウ理論
10-3 2次相転移と臨界指数
得点範囲(下限) |
0 | 10 | 20 | 30 | 40 | 50 |
60 | 70 | 80 | 90 | 100 |
人数(全39人中) |
0 | 1 | 4 | 4 | 7 | 7 |
5 | 0 | 4 | 1 | 6 |
(配点=150:平均点=61:最高点=145)
採点者(渡邉)のコメント:[PDFファイル]
- 中間試験2 (1220):[試験問題]
得点範囲(下限) |
0 | 10 | 20 | 30 | 40 | 50 |
60 | 70 | 80 | 90 | 100 | 110 | 120 |
人数(全49人中) |
4 | 4 | 4 | 14 | 11 | 2 |
0 | 4 | 2 | 0 | 2 | 1 | 1 |
(配点=120:平均点=41:最高点=120)
採点者(鈴浦)のコメント:[採点結果]
- 第11回 (0110):拡散現象:
[演習問題]
[解答例]
11-1 ランダムウォーク
11-2 拡散方程式
11-3 ランジュバン方程式
11-4 アインシュタイン関係式
得点範囲(下限) |
0 | 10 | 20 | 30 | 40 | 50 |
60 | 70 | 80 | 90 | 100 |
人数(全42人中) |
5 | 7 | 7 | 3 | 6 | 1 |
2 | 3 | 1 | 1 | 6 |
(配点=150:平均点=47:最高点=150)
採点者(渡邉)のコメント:[PDFファイル]
- 第12回 (0117):熱平衡状態への緩和:
[演習問題]
[解答例]
12-1 速度分布関数の時間発展
12-2 クラマース・モヤル展開
12-3 フォッカー・プランク方程式
得点範囲(下限) |
0 | 10 | 20 | 30 | 40 | 50 |
60 | 70 | 80 | 90 | 100 |
人数(全41人中) |
1 | 3 | 5 | 2 | 7 | 5 |
2 | 3 | 2 | 1 | 10 |
(配点=150:平均点=66:最高点=150)
採点者(渡邉)のコメント:[PDFファイル]
- 期末試験 (0124):[試験問題]
得点範囲(下限) |
0 | 10 | 20 | 30 | 40 | 50 |
60 | 70 | 80 | 90 | 100 | 110 | 120 |
人数(全50人中) |
1 | 2 | 4 | 13 | 10 | 9 |
2 | 1 | 1 | 1 | 2 | 3 | 1 |
(配点=120:平均点=48:最高点=120)
採点者(鈴浦)のコメント:[採点結果]
- 演習期末試験 (0131):[試験問題]
得点範囲(下限) |
0 | 10 | 20 | 30 | 40 | 50 |
60 | 70 | 80 | 90 | 100 |
人数(全38人中) |
1 | 0 | 1 | 1 | 2 | 4 |
8 | 5 | 1 | 6 | 9 |
(配点=90-140:平均点=74:最高点=135)
採点者(鈴浦)のコメント:[採点結果]
シラバス(北海道大学公式ページ)
-
シラバス検索
別ウインドウが開くので,課程区分を「学士課程」,教員名を「suzuura」あるいは「鈴浦」で検索を.
参考文献のリンクから北大図書館の蔵書検索の結果を見ることが出来る.全て図書館に有るらしい.
このシラバスはコース配属時に配布された便覧にある内容とは異なるので注意する.
参考書
シラバスに示した参考書をここにも列挙しておく.
- 岩波基礎物理シリーズ第7巻「統計力学」,長岡洋介(岩波書店)
- 統計力学,久保亮五著(共立出版)
- キッテル熱物理学,山下次郎他訳(丸善)
- 熱力学・統計力学,原島鮮著(培風館)
- 熱学入門,藤原邦男他著(東大出版会)
- 統計力学,土井正男著(朝倉書店)
- 統計力学を学ぶ人のために,芦田正巳著(オーム社)
- ゼロからの熱力学と統計力学,和達三樹他著(岩波書店)
上記のリストにある文献は講義計画に沿うものとして頻繁に参照していると理解いただいてよい.
最初のものは統計力学Iで使用したもの.
5章までは履修済みであることを前提に講義を行ってもよいと,西口先生と,打ち合わせ済みだが,最初の数回は,統計力学の基礎の部分を復習する.
次の3つは古典的で私が学生の頃に参考書として挙げられたものだが,初学者にはやや難しいかもしれない.
最後の3つは比較的最近の教科書.
演習で出される問題を解く際も上記の参考書でほとんど対応できるはず.ただ,統計力学で学部生に計算できる範囲の問題は限られている.
それを考えると,それらに手っ取り早く取り組める演習書を購入するのもいいだろう.
- 大学演習 熱学統計力学,久保亮五編(裳華房)
- 演習 熱力学・統計力学,広池和夫他著(サイエンス社)
これらは,私が学生の頃から使っているもので,今でも手に入るはず.
特に,前者は英訳もなされるほど著名な本で,物性理論を専門とする研究者は一度は必ず手に取っていると思う.
統計力学Iで教科書指定があったので,こちらでも同じものを指定しておいたが,それがどうしても必要という訳ではない.半年,それで学習したんだから,色々と探してみて,自分の考え方と相性のいいものを選ぶのが良いと思う.
物理は答えが1つなのだからどれか1つのやり方を,極端な話,丸暗記すれば良いという考え方もあろう.
しかし,我々が学んでもらいたいのは結果に至るプロセスである.
普遍性が高い現象ほど出発点が同じならどういう道筋を経ても同じ結論に到達するもので,つまり,理解の仕方は多種多様である.
様々な理解の仕方に納得できれば理想だが,まずは,自分に合ったものを探すのが勉強の第一歩と思って欲しい.
この講義は,専門書が読みこなせるための導入のつもりで行うので,自分の購入した本と見比べながら勉強を進めてもらえたらいいのではないか.
将来,理論研究に取り組みたいと考える学生のために,文献を一つ追加したい.
統計力学 I, II(培風館、新物理学シリーズ
詳しくはリンク先を見てもらうとして,内容の説明・式の導出が非常に丁寧であり,私が講義で話をしたい内容のほとんど全てがこの本に含まれていると言っても過言ではない.
特に,IIに含まれる内容は,この講義で提供する予定の内容と大きく重なっているが,これを教科書として半年で講義するには,私の能力が不足している.
著者の田崎晴明氏は量子スピン系,遍歴電子系の強磁性に関する数理的に厳密な解析に関する業績により知られている,世界で通用する日本人物性理論研究者のうちの一人であり,
まさに専門家として統計力学を語るにふさわしい.
注釈の多い文章は読みづらい部分も無いわけでもないが,数学的な厳密さを追うだけではなく,統計力学のココロのようなものを伝えようと工夫がなされ,
また,数理物理的研究がどのようになされるかという雰囲気まで垣間見えるようなところもある.
少なくとも,理論研究を志す者は一度は目を通す価値が有ると思うし,自分が学生の頃,このような本があったらよかったと思う.
ただし,上でも述べたが,これが万人に通用するとは限らない.
新しいことを学ぶ際に,教員・教科書との相性というのは無視できない影響を及ぼす.
残念ながら教員は選べないので,手本とする教科書だけは自分にあったものを選んでいただきたい.
ひとつの教科書を選んだ後も,分からない部分に遭遇したらよく考えるのと同時に,必ず,別な文献を参照するよう心がけて欲しい.
思わず膝を打つような説明に出会えることも有るはずだ.
インターネットの検索エンジンは確かに便利だが,文章に込められた著者の思いは書籍の方が何倍も重いと思う.
物理を学ぶ者は,高度な知的活動に携わるものとしてその価値を見出し対価を支払うこと受け入れ,知識を蓄えた後,将来は知的生産活動に貢献して対価を受け取る立場になって欲しいと思う.
統計力学IIおよび統計力学演習II(2011年度)受講者のためのページ